外国人が「帰化」の手続きをして許可されると、日本国籍を取得することができて、日本人と同等の社会保障や権利を得ることができるようになります。
日本に長く住んでいて、生活や仕事の都合上、日本人となった方が暮らしやすい方もいらっしゃいます。「帰化」が許可されると、外国人ならではのわずらわしさがなくなり、日本人として生活できるようになります。
では、外国人が「帰化」するには、どんな手続きが必要なのか?また日本国籍を取得するとどんな変化があるのか?など気になるところですね。
そこで、本記事では、日本国籍になるための在留資格「帰化」について、疑問となる点について解説していきます。
- 日本国籍を取得するには帰化申請をする
- 帰化許可申請者数の推移
- 日本国籍になると何が変わる?
- 日本国籍を取得する条件
- 日本国籍を取得するのは難しい?
- 国籍取得が難しい国
- まとめ
目次
日本国籍を取得するには帰化申請をする
外国人の方が日本国籍を取得するには、帰化申請を行う必要があります。日本の法律では二重国籍が認められていないため、帰化許可となった場合は、元の国籍を離脱して日本国籍に
変更されます。
- 国籍法第四条:日本国民でない者は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる。帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
- 国籍法第十四条:
1 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が18歳に達する以前であるときは20歳に達するまでに、その時が18歳に達した後であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
帰化許可申請者数の推移
法務省が公表する「帰化許可申請者数等の推移」の数値を以下にまとめておきます。
<帰化許可数と帰化不許可数>

<国籍別の帰化許可数>

日本国籍になると何が変わる?
では、外国人が帰化して日本国籍を取得すると何が変わるのか確認しておきましょう。
- 在留手続きが不要になる
- 夫婦が同じ戸籍になる
- 日本の社会保障制度が利用できる
- ローンや金融機関が利用できる
- 公務員として就職できる
在留手続きが不要になる
在留資格の手続きの負担がなくなることは、外国人にとっては大きなメリットになります。
帰化すれば、在留資格の更新や在留カードの所持など、外国人ならではの対応が要らなくなります。日本国籍になるため、外国人だからできなかった様々な問題が解消されます。
夫婦が同じ戸籍になる
配偶者や子どもが日本人の場合は、家族全員が同じ戸籍に入ることができます。
また、外国人が日本で公的な手続きをする場合、母国の領事館から書類を取り寄せる必要がありますが、帰化した後であれば、日本人と同じように最寄りの役所で済ませることができるので、手間が無くなります。
日本の社会保障制度が利用できる
保険、福祉、年金、教育等の社会保障が受けられるようになります。
ローンや金融機関が利用できる
ローンを利用して住宅や不動産、自動車などを購入することも可能です。帰化することは日本人としての信用度が上がるため、融資を受けやすくなります。
公務員として就職できる
国家公務員など、日本人しかなれない公的機関の職業にも就職できるようになります。就労制限のない永住者の場合は、市役所や警察など公的機関の就職は認められていません。
日本国籍を取得する条件
帰化して日本国籍を取得するには、以下の帰化要件を満たす必要があります。
- 引き続き5年以上日本に住所を有すること
(そのうち3年は就労ビザで活動していること)
- 18歳以上であること
- 素行が善良であること(犯罪、法令違反を犯さず、公的義務を履行していること)
- 日本での生活で生計が成り立っていること
(自分や親族の資産や技能で生計を営むことができていること)
- 帰化したら母国の国籍を失うこと
- 危険な思想を持っていないこと(日本国憲法の遵守が必要です)
※日本語の読み書きができること
日本国籍を取得するのは難しい?
日本国籍を取得する難易度は、特に以下のポイントが比重を占めています。
- 膨大な必要書類を収集する必要がある
- 7つの帰化要件をクリアする必要がある
必膨大な要書類を収集する必要がある
帰化申請で最も手間のかかる作業が書類の収集です。帰化申請の提出書類は、日本国内で収集できる書類以外に本国から取り寄せる書類が必要です。
申請人が日本にいて本国に帰国せずに書類を収集するには、家族や知人に頼ってお願いするようになります。申請人の国籍によっては、妥当な書類が見つからず時間がかかるケースもあります。また、本国書類はすべて翻訳作業が必要になるため、そのための作業時間と費用も考えておく必要があります。
7つの帰化要件をクリアする必要がある
日本国籍を取得するには、帰化するための7つの要件(住居条件、能力条件、素行条件、生計条件、喪失条件、思想条件。日本語能力条件)を満たしていることと、これらを総合的に審査されます。ただし、以下の該当者の場合は、要件が緩和されます。
- 日本生まれである
- 日本人の配偶者である
- 日本人の子供である
- 日本人の養子である
国籍取得が難しい国
では、日本以外で、国籍を取得するのが難しいと言われている国について、参考に紹介しておきます。国によっては二重国籍を認めている場合もあり、居住年数については各国共通して長期居住歴が必要な要件となっているようです。
- オーストリア:
永住権を取得している外国人がオーストリアに帰化するには、継続して10年以上オーストリアに居住している必要があります。オーストリアも二重国籍を認めていません。
- ドイツ:
8年以上のドイツでの居住歴が必要です。移民統合コースを受講し修了した人は7年に短縮されます。二重国籍はドイツでも認められていません。
- アメリカ:
アメリカの永住権を取得した後、5年以上の居住歴が必要です。
その他、スピーキング、リーディング、ライティングなどの英語テストがあります。
- スイス:
スイスに帰化する場合、EU加盟国の国民を除き、継続して10年以上スイスに居住する必要があります。スイスでは二重国籍が認められています。
まとめ
日本の生活が長く、将来的にも日本で暮らしていく予定がある外国人は、日本国籍が取得できる「帰化」申請を検討することができます。
日本国籍を取得するには、帰化要件を満たしていることと、申請に必要なたくさんの書類を収集することが必要です。
「帰化」申請は他の在留資格の手続きよりも難易度が高くなる傾向にありますので、申請を考えている方は、一度行政書士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。