三輪美幸
行政書士法人GOALのVISAチームリーダー。これまでの豊富なビザ申請経験をもとに、日本で暮らしたい外国人の皆様向けに、日々のお困りごとを解決できるよう寄り添った記事を執筆するよう心がけています!
[身分系ビザ]
目次
日本人と国際結婚した外国人の方は、「配偶者ビザ」を取得することで日本に在留できます。
この配偶者ビザは、他の在留資格と比較して就労活動に大きなメリットがあります。
本記事では、配偶者ビザでの就労に制限があるのか、また就労ビザとの違いやメリット、離婚した場合などの注意点について網羅的に解説します。
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配偶者ビザとは、正式には「日本人の配偶者等」という在留資格のことを指します。この在留資格は、日本人と法律上の婚姻関係にある外国人配偶者のほか、日本人の実子や日本の民法上の特別養子として日本で生活するために付与されます。
身分や地位に基づいて許可される在留資格であるため、他の就労を目的とした在留資格とは異なり、日本で行える活動内容に原則として制限がありません。そのため、就労はもちろん、学業や家事など、さまざまな活動を自由に行うことが可能です。
日本人の配偶者等の在留資格は、活動内容に制限が設けられていないため、就労に関しても職種や業種、労働時間などの制約が一切ありません。いわゆる就労ビザでは認められないレストランのホールスタッフや工場の作業員といった単純労働に従事することも可能です。
また、正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトといった雇用形態も問われず、日本人と同様に自由に選択できます。さらに、個人事業主として事業を立ち上げたり、会社を設立して経営者として活動したりすることも認められています。
配偶者ビザを取得する最大のメリットは、就労に関する制限がなくなることです。職種や労働時間を気にすることなく、日本人と同様に働くことができます。これにより、キャリアの選択肢が大幅に広がります。
また、将来的に日本での永住や帰化を考えている場合、そのための要件が緩和されるという大きな利点もあります。
配偶者ビザは、身分に基づく在留資格であるため、就労活動に制限がありません。就労ビザのように、学歴や職歴に基づいて許可された特定の業務範囲内でしか働けないといった制約はなく、職種や業種を自由に選ぶことができます。例えば、専門職だけでなく、接客業や製造業などの分野でも働くことが可能です。
また、労働時間にも上限がないため、フルタイムで働くことはもちろん、複数の仕事を掛け持ちするダブルワークも問題ありません。日本人と同じ条件で自由にキャリアを形成できる点が大きな特徴です。
帰化とは、日本国籍を取得することです。外国人が帰化を申請する場合、原則として「引き続き5年以上日本に住所を有すること」という居住要件を満たす必要があります。しかし、日本人の配偶者の場合はこの要件が緩和されます。
「日本人の配偶者」の在留資格を持つ外国人は、「引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する」か、「婚姻の日から3年が経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有する」のいずれかの要件を満たせば、帰化申請が可能になります。これにより、より短い期間で日本国籍の取得を目指せます。
永住許可は、在留期間の更新をすることなく日本に永住できる権利です。永住許可を得るには、原則として「引き続き10年以上日本に在留していること」が求められます。しかし、日本人の配偶者の場合はこの要件が大きく緩和され、「実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること」で永住許可申請の対象となります。
この緩和措置により、日本での安定した生活基盤を早期に築くことが可能になります。ただし、申請には素行が善良であることや、独立して生計を営める資産または技能を有することも求められます。
配偶者ビザは就労面で大きなメリットがありますが、その一方で、ビザの根拠が日本人との婚姻関係にあるため、特有の注意点が存在します。日本人配偶者との離婚や死別といった身分関係の変動があった場合には、在留資格の変更手続きが必要です。
また、ビザの申請時や更新時には、偽装結婚ではないこと、つまり実態のある婚姻生活を送っていることを証明しなくてはなりません。
日本人配偶者と離婚または死別した場合、配偶者ビザの根拠となる身分関係が消滅するため、原則としてその在留資格で日本に滞在し続けることはできません。離婚・死別した日から14日以内に出入国在留管理局へその事実を届け出る義務があります。その後、他の在留資格への変更を検討する必要があります。例えば、日本での滞在期間や日本人との間に子がいるなどの事情によっては、「定住者」や「永住者」の在留資格に変更できる可能性があります。
何も手続きをしないまま在留期間が過ぎると不法滞在となるため、速やかに専門家へ相談することが重要です。
配偶者ビザの申請や更新の審査では、法律上の婚姻手続きが完了しているだけでなく、夫婦として社会通念上、実態のある共同生活を営んでいるかが厳しく確認されます。これは、在留資格の取得のみを目的とした偽装結婚を防ぐためです。審査では、同居の事実、家計の状況、夫婦間のコミュニケーションの頻度、交際に至った経緯などが総合的に判断されます。
そのため、申請時には交際中の写真やメッセージのやり取り、家計簿、公共料金の領収書など、婚姻生活の実態を示す客観的な資料を提出し、信憑性を証明する必要があります。
配偶者ビザの更新申請時には、初回の申請時と同様に、安定した婚姻関係が継続しているかが重要な審査ポイントとなります。夫婦が同居し、互いに協力し扶助しながら生活している実態を示さなければなりません。また、夫婦の収入によって安定した生計が維持できているかも確認されます。
特に、住民税や国民健康保険料などの公的義務をきちんと果たしているかは厳しく審査されるため、滞納がないように注意が必要です。正当な理由なく別居している場合や、納税状況に問題がある場合は、更新が不許可となる可能性があります。
日本で外国人が生活し働くためには、その活動内容に応じた在留資格が必要です。中でも「配偶者ビザ」「就労ビザ」「家族滞在ビザ」は混同されやすいですが、就労の可否や活動範囲に大きな違いがあります。
それぞれの在留資格が持つ特徴や制限を正しく理解することは、自身の状況に合った適切な手続きを行う上で非常に重要です。
就労ビザは、特定の専門分野における知識や技術を活かして日本で働くために付与される在留資格の総称です。例えば、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの種類があり、それぞれ許可された業務範囲が定められています。そのため、就労ビザを持つ外国人は、許可された職種の範囲内でしか働くことができません。
単純労働に従事することは認められておらず、転職して職務内容が変わる場合には、新たに入国管理局での手続きが必要になるなど、活動に一定の制限があります。
家族滞在ビザは、特定の就労ビザなどを持って日本に在留する外国人の扶養を受ける配偶者や子のために設けられた在留資格です。このビザの目的は、家族として日本で一緒に生活することにあるため、原則として就労活動は認められていません。ただし、事前に入国管理局から「資格外活動許可」を取得すれば、就労が可能です。
その場合でも、労働時間は原則として週28時間以内と定められており、風俗営業関連の職種で働くことは禁止されるなど、厳しい制限が課せられます。
日本人と法律上の婚姻関係が成立している外国人配偶者は、「日本人の配偶者等」の在留資格の対象となります。この場合、事実婚や内縁関係のパートナーは含まれず、日本の法律に基づいて正式に婚姻が成立していることが必要です。また、海外で現地の法律に則って婚姻した場合でも、日本の役所への婚姻届の提出が完了していなければなりません。
この在留資格は、夫婦が日本で安定した生活を送ることを目的としています。
日本国籍を持つ親から生まれた子どもは、「日本人の配偶者等」の在留資格を取得できる場合があります。この在留資格は、日本人の配偶者、特別養子、または日本人の子として出生した者が対象です。そのため、日本国籍を持つ親から生まれた子どもは、日本人の子として「日本人の配偶者等」の在留資格に該当することがあります。
これには、婚姻関係にある男女間に生まれた嫡出子のほか、婚姻関係にない男女間に生まれ、日本人親から認知された非嫡出子も含まれます。
出生時に日本国籍を取得しなかった場合や、海外で生まれた場合でも、親子関係が証明できればこの在留資格の対象となることがあります。親が後に日本国籍を離脱した場合でも、子が生まれた時点で親が日本人であれば、この要件に該当する場合があります。
日本の民法第817条の2の規定に基づき、家庭裁判所の審判を経て成立した特別養子縁組による日本人の養子も、「日本人の配偶者等」の在留資格の対象です。特別養子縁組は、実の親との法的な親子関係を終了させ、養親との間に実の子と同じ関係を築く制度です。
そのため、一般的な普通養子とは区別されます。この在留資格を取得するためには、家庭裁判所が発行する審判書謄本と確定証明書によって、特別養子縁組が成立していることを証明する必要があります。
「日本人の配偶者等」の在留資格は、就労に関する活動制限が一切なく、職種や労働時間を問わず日本人と同様に自由に働ける点が最大の利点です。就労ビザのような専門性の要件や、家族滞在ビザのような労働時間の制約もありません。
ただし、この在留資格は日本人との安定した婚姻関係が基盤となっているため、申請や更新の際には婚姻の実態を証明することが求められます。また、離婚や死別によって身分関係が変動した場合は、在留資格の変更手続きが必要になるなど、維持していく上での注意点も存在します。これらの特徴を正しく理解し、適切な手続きを行うことが、日本での安定した生活につながります。
A. 就労ビザから配偶者ビザへの切り替えは可能です。この手続きは「在留資格変更許可申請」と呼ばれ、外国人の方が日本人と結婚した場合に行います。必要書類としては、在留資格変更許可申請書、証明写真、パスポート、在留カードが挙げられます。その他、日本人配偶者の戸籍謄本や住民票(世帯全員記載)、質問書、身元保証書なども必要です。状況によっては、収入を証明する在職証明書や給与明細などの提出も求められる場合があります。偽装結婚防止のため、婚姻の信ぴょう性や結婚後の経済的安定性、素行の良し悪しなどが審査のポイントとなりますので、出会いから結婚に至る経緯などを詳しく説明する理由書を作成することが重要です。一般的に、審査期間は1か月から3か月程度かかります。