三輪美幸
行政書士法人GOALのVISAチームリーダー。これまでの豊富なビザ申請経験をもとに、日本で暮らしたい外国人の皆様向けに、日々のお困りごとを解決できるよう寄り添った記事を執筆するよう心がけています!
[身分系ビザ]
目次
国際結婚をした夫婦の間に生まれた子供の姓(苗字)を、両親の姓を組み合わせた「複合姓(ダブルネーム)」にすることを検討する方が増えています。日本の法律では複合姓という制度は存在しませんが、家庭裁判所の許可を得ることで実現が可能です。
本記事では、外国人と結婚する上で議題となる複合姓の概要から、申請手続き方法、メリット・デメリット、法的な条件や注意点まで、子供の姓を決める上で必要な情報を網羅的に解説します。
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複合姓(ダブルネーム)とは、日本人と外国人の夫婦の間に生まれた子供が、両親双方の姓を名乗ることを指します。具体的には、日本人親の姓と外国人親の姓をハイフンなどで連結した形(例:田中ースミス)や、外国人親の姓を先に表記する形(例:スミス太郎)などが考えられます。日本の戸籍法には複合姓に関する明確な規定はありません。
そのため、複合姓を実現するには、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可申立」を行い、氏として認めてもらう法的な手続きを経る必要があります。個人の名前の一部であるミドルネームとは異なり、複合姓は戸籍上の「氏」そのものとして扱われる点が大きな特徴です。
国際結婚で生まれた子供の名字や戸籍は、日本の法律に基づいて定められたルールに従って決まります。原則として、子供は日本人親の戸籍に入り、その姓を名乗ることになります。外国人親の姓や、両方の姓を組み合わせた複合姓を名乗らせたい場合は、別途、家庭裁判所での手続きが必要です。
ここでは、子供の名字と戸籍に関する基本的な仕組みについて解説します。
国際結婚の場合、夫婦はそれぞれ結婚前の姓を名乗り続ける「夫婦別姓」が原則です。そして、二人の間に生まれた子供の姓は、特別な手続きをしなければ、戸籍の筆頭者である日本人親の姓を自動的に引き継ぐことになります。例えば、日本人の田中さんと外国人のスミスさんが結婚した場合、子供の姓は原則として「田中」となります。
子供に外国人親の姓である「スミス」や、両方の姓を合わせた「田中ースミス」のような複合姓を名乗らせたい場合には、家庭裁判所の許可を得るための法的な手続きを踏まなければなりません。
子供の姓を外国人配偶者の姓に変更したい場合、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」を行う必要があります。この申立ては、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申立てが認められるためには、「子の利益のために氏の変更が必要である」といった正当な事由が求められます。
例えば、外国人配偶者の母国で生活する予定がある、あるいは現地での社会生活において父親と同じ姓を名乗る方が便宜であるといった具体的な理由が必要です。家庭裁判所の許可を得た後、市区町村役場に届け出ることで、戸籍上の氏が外国人配偶者の姓に変更されます。この手続きは、子供が生まれてからいつでも申し立てることが可能です。
国際結婚で生まれた子供は、原則として日本人親の戸籍に入り、その姓を名乗ります。したがって、子供が日本人親の姓を名乗る場合、特別な手続きは基本的に不要です。出生届を提出する際に、日本人親を筆頭者とする戸籍に子供が入ることで、自動的にその姓が適用されます。
ただし、結婚時に日本人親が氏の変更届を提出し、外国人配偶者の姓を名乗っている場合は、子供もその変更後の姓を名乗ることになります。もし、一度外国人配偶者の姓に変更した子供の姓を、再び元の日本人親の姓に戻したいと考える場合には、改めて家庭裁判所での氏の変更許可申立てが必要となる点に注意が必要です。
国際結婚において、夫婦はそれぞれの国の法律に基づいて婚姻関係を結びますが、戸籍に関しては日本の法律が適用されます。外国人配偶者は日本の戸籍を持つことができないため、日本人配偶者を筆頭者として新しい戸籍が作られるか、既存の戸籍に婚姻の事実が記載されます。
この夫婦の間に子供が生まれると、その子供は日本人国籍を有する場合、原則として日本人親の戸籍に入籍します。戸籍には子供の名前、生年月日、そして親との続柄が記載され、氏(姓)は戸籍筆頭者である日本人親のものと同じになります。外国人親の名前は子供の戸籍の父母の欄に記載されますが、戸籍そのものに外国人親が入るわけではありません。
家庭裁判所の許可を得て子供の姓を外国人配偶者の姓や複合姓に変更した場合、戸籍の記載も変更されます。具体的には、子供の戸籍の「氏」の欄が、許可された新しい姓に書き換えられます。
例えば、「田中」から「スミス」や「田中ースミス」に変更された場合、それが戸籍に正式に記録されます。この変更によって、子供が戸籍の筆頭者である日本人親と異なる姓を名乗ることになるため、子供を筆頭者とする新しい戸籍が作られるのが一般的です。
元の親の戸籍には、子供が氏を変更して転籍(新しい戸籍に移ること)した旨が記載されます。これにより、親子関係は維持されたまま、姓の変更と戸籍の独立が完了します。
子供の姓を複合姓にすることには、いくつかのメリットが存在します。最も大きな利点は、子供が両親双方の文化的背景を受け継いでいることを名前の形で示すことができ、アイデンティティの確立に繋がることです。また、特に海外で生活する場合や国際的な交流が多い場面では、実用的な利便性が向上することもあります。ここでは、複合姓がもたらす具体的なメリットについて詳しく見ていきます。
複合姓にする最大のメリットの一つは、子供が両親双方の姓を引き継げる点です。これにより、子供は自身のルーツが両親、ひいては二つの異なる文化にあることを名前を通じて常に認識できます。これは、子供自身のアイデンティティ形成において非常に重要な要素となり得ます。
また、家族の一体感を名前の面からも示すことができます。例えば、父親の姓しか名乗らない場合、母親側の親族との繋がりが姓の上では見えにくくなることがあります。複合姓であれば、どちらの親族との関係性も名前から明らかになり、家族全体の繋がりをより強く感じさせることができるでしょう。
複合姓は、海外での生活や国際的な手続きにおいて実用的な利便性をもたらします。特に、外国人親の母国で生活する場合、子供が親と同じ姓、あるいは関連する姓を名乗っていることで、親子関係の証明が容易になります。これにより、出入国審査、学校への入学手続き、医療機関での受診といった様々な場面で、説明の手間が省け、手続きが円滑に進むことが期待できます。
また、現地でのコミュニティに溶け込む際にも、父親または母親の姓が含まれていることで、社会的な認知を得やすくなる場合があります。このように、国際的な移動や生活を前提とする家族にとって、複合姓は多くの場面で便宜をもたらします。
複合姓には多くのメリットがある一方で、考慮すべきデメリットも存在します。まず、複合姓への変更は自動的に認められるものではなく、家庭裁判所での法的な手続きが必要となり、時間と労力がかかります。
また、必ずしも許可されるとは限らないという不確実性も伴います。無事に許可された後も、社会生活の様々な場面で発生する名義変更手続きの煩雑さなど、実用面での課題も考えられます。
複合姓を実現するためには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」を行う必要があります。この手続きは、申立書の作成や必要書類の収集など、相応の準備と手間を要します。申立てが認められるには、複合姓にすることが「子の利益のために必要である」という「やむを得ない事由」を具体的に示すことが求められます。単に「両親の姓を入れたい」という希望だけでは不十分と判断される可能性があります。
裁判所が子供の福祉や利益を総合的に考慮した結果、申立てが許可されないケースも存在します。このように、法的な手続きの煩雑さと、必ずしも望んだ結果が得られるわけではないという不確実性がデメリットとして挙げられます。
家庭裁判所の許可を得て複合姓に変更できた後には、様々な名義変更手続きが発生します。まず、市区町村役場で戸籍の氏を変更する届出が必要です。それに伴い、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証、銀行口座、各種証明書など、旧姓で登録されているあらゆるものの名義を新しい複合姓に変更しなければなりません。
これらの手続きは各機関で個別に行う必要があり、多くの時間と労力がかかります。特に、姓が長くなったり、ハイフンなどの記号が含まれたりすることで、システム上の登録に制限が生じたり、書類の記入欄に収まりきらなかったりといった実務的な問題が発生する可能性も考慮しておく必要があります。
子供の姓を複合姓に変更するためには、家庭裁判所から「子の氏の変更許可」を得る必要があります。この許可を得るための法的な条件として、戸籍法第107条に基づき「やむを得ない事由」が存在することが求められます。
「やむを得ない事由」とは、氏の変更をしないと子供の社会生活において著しい支障が生じるような客観的な事情を指します。例えば、「外国人親の母国で生活する上で、複合姓でないと親子関係の証明が困難である」「通称として複合姓を長年使用しており、社会的に定着している」「一方の親の姓だけでは、いじめや差別を受ける可能性がある」といった具体的な理由がこれに該当します。単に「格好いいから」「両親の姓を入れたいから」といった主観的な希望だけでは、「やむを得ない事由」とは認められにくい傾向があります。
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複合姓への変更手続きは、家庭裁判所への申立てから始まります。
①子供の住所地を管轄する家庭裁判所を確認し、「子の氏の変更許可申立書」を作成:
この申立書には、申立ての理由となる「やむを得ない事由」を具体的かつ客観的に記載することが重要です。
②申立書と合わせて、戸籍謄本などの必要書類を収集し、収入印紙と郵便切手を添えて家庭裁判所に提出
③提出後、裁判所が審理を開始し、多くの場合、申立人(親権者)との面接(審問)が行われ、申立ての理由について詳細な聞き取りがなされる:
裁判官が提出された書類と面接の内容を総合的に判断し、氏の変更を認めるかどうかの審判を下します。
許可の審判が下りたら、その審判書を受け取り、市区町村役場に届け出ることで手続きが完了します。
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家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる際には、いくつかの書類を準備する必要があります。まず必須となるのが「申立書」で、これは裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードできます。次に、申立人(子供)の「戸籍謄本(全部事項証明書)」が必要です。もし、父または母が外国人である場合、その事実が記載されている日本の戸籍謄本を提出します。
その他、申立ての理由を裏付けるための資料(疎明資料)も重要になります。例えば、海外で生活する予定がある場合はその証明書、通称として複合姓を使用している場合は、その名前で届いた郵便物や学校の連絡帳の写しなどが該当します。手数料として子供一人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手も必要になります。詳細は管轄の家庭裁判所に確認してください。
子の氏の変更許可申立てを行う際の注意点として、最も重要なのは申立書に記載する「申立ての理由」です。なぜ複合姓にする必要があるのか、その「やむを得ない事由」を具体的かつ説得力を持って記述しなければなりません。客観的な事実に基づいて、氏の変更が子供の利益にどう繋がるのかを明確に示します。例えば、外国人親の母国での生活の便宜や、子供のアイデンティティの確立といった点を、具体的なエピソードを交えて説明すると良いでしょう。
また、子供が15歳以上の場合は、本人が申立人となる必要があります。15歳未満の場合は、法定代理人である親権者が手続きを行いますが、子供の意思も尊重されるため、日頃から子供と話し合っておくことも大切です。
複合姓への変更が認められた裁判例は複数存在します。認められるケースでは、子供の福祉と利益が主な判断基準となっています。例えば、外国人父の母国で生活する予定があり、父と同じ姓の一部を名乗ることが社会生活上の便宜に繋がると判断された事例があります。
この場合、「田中・スミス」のように両親の姓をハイフンで連結する形や、「スミス太郎」のように外国人親の姓を氏とする形が許可されています。また、日本国内で生活している場合でも、通称として複合姓を長年使用し、学校や地域社会でその名前が広く認知されている事実が証明できれば、それが「やむを得ない事由」として認められることがあります。これらの裁判例は、単なる親の希望だけでなく、子供を取り巻く具体的な生活実態が重視されることを示しています。
家庭裁判所から「氏の変更を許可する」という審判が下りたら、手続きは完了ではありません。
次に、その審判内容を戸籍に反映させるための手続きを市区町村役場で行う必要があります。
まず、家庭裁判所から送付される「審判書謄本」を受け取ります。
子の氏の変更届には提出期間に関する明確な規定はありません。家庭裁判所から郵送される「子の氏の変更許可の審判書の謄本」を添付し、本籍地または所在地の市区町村役場に「氏の変更届」を提出します。この届出により、子供の戸籍の氏が新しい複合姓に正式に変更されます。多くの場合、子供を筆頭者とする新しい戸籍が作られます。氏の変更届は、提出期限を過ぎたことによる過料の対象とはなりません。ただし、住所変更届など、他の届出には提出期間が定められているものもありますので、注意が必要です。
複合姓への変更は、子供のアイデンティティ形成や国際的な生活における便宜といったメリットをもたらします。戸籍上、正式な氏として両親の姓が記載されることで、自身のルーツを明確にすることができます。しかし、法律的な観点からはデメリットも存在します。日本の法律では複合姓は標準的ではないため、公的な書類やシステムで名前が長く表示されたり、ハイフンの使用が認められなかったりする可能性があります。また、一度氏を変更すると、再度元の姓に戻すためには再び家庭裁判所の許可が必要となり、手続きは容易ではありません。国籍には直接影響しませんが、パスポートの名前表記などで注意が必要になる場合があります。これらの法的な側面と実生活への影響を総合的に考慮することが求められます。
また、離婚時には複雑な申請が必要となるため、注意が必要です。
国際結婚後の子供の姓を複合姓(ダブルネーム)にすることは、日本の法律に定められた制度ではないものの、家庭裁判所の「子の氏の変更許可」を得ることで実現可能です。この手続きには、「やむを得ない事由」を具体的に示す必要があり、子供のアイデンティティ形成や海外生活での便宜などが理由として挙げられます。
メリットとしては、両親のルーツを名前に反映できる点や国際的な場面での利便性がありますが、一方で、法的手続きの煩雑さや許可後の名義変更の手間といったデメリットも存在します。複合姓を検討する際は、これらの点を総合的に理解し、子供の将来の利益を最優先に考えて判断することが重要です。
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A. 家庭裁判所への申立てから審判が下りるまでの期間は、通常1ヶ月から3ヶ月程度ですが、事案によってはさらに時間を要する可能性もあります。
A. 裁判所の判断にはよりますが、氏として一体のものであることを示すために、ハイフンが用いられるのが一般的です。
A. 残念ながら却下される可能性もございます。 裁判所は「子の利益のために必要である」という「やむを得ない事由」を重視するため、単に希望するだけでは認められないケースもあります。 却下された場合は、資料の追加提出や、住所変更後に別の家庭裁判所に再申立てを行うなどの対策が考えられます。
A. 国際結婚の場合、夫婦別姓が原則ですが、婚姻後6ヶ月以内であれば「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出することで、日本人側が外国人配偶者の姓に変更できます。 複合姓を希望する場合は、家庭裁判所での「子の氏の変更許可申立て」が必要です。
A. 同様に原則として夫婦別姓です。 日本人側が韓国人配偶者の姓に変更したい場合は、婚姻後6ヶ月以内であれば役所への届出で可能ですが、6ヶ月を過ぎると家庭裁判所の許可が必要となります。 韓国では結婚後も夫婦別姓が一般的で、子供は父親の姓を受け継ぐのが基本です。
A. 原則として夫婦別姓になります。 どちらかの姓を使用することも可能ですが、複合姓にする場合は家庭裁判所での手続きが必要です。