三輪美幸
行政書士法人GOALのVISAチームリーダー。これまでの豊富なビザ申請経験をもとに、日本で暮らしたい外国人の皆様向けに、日々のお困りごとを解決できるよう寄り添った記事を執筆するよう心がけています!
[身分系ビザ]
目次
日本への帰化を考える際、多くの人が気になるのは「氏名をどうするか」という点でしょう。特に、中国や韓国のルーツを持つ方にとっては、自身のアイデンティティと新しい生活のバランスをどのように取るかが重要な課題となります。この記事では、日本に帰化した方々がどのような名字を選び、またその選択が社会生活にどのような影響を与えるのでしょうか。
帰化申請後、日本国籍を取得する際に、新しい名字を自由に決めることができます。これまでの外国式の名字をそのまま使用することも可能ですが、日本社会での生活を考慮すると、日本風の名字を選択するケースも少なくありません。
本記事では、実際に帰化した方がどのような名字を選ぶ傾向にあるのか、その背景にある考え方や、名字の変更が社会生活に与える影響、さらには国際結婚における名字の選択肢についても詳しくご紹介します。
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日本に帰化する際、新たな名字を決定する機会があります。帰化する方は、これまでの名字をそのまま使用することもできますし、日本風の新しい名字に変更することも可能です。
かつては日本風の氏名への変更が半ば強制されるような時代もありましたが、1985年の国籍法改正以降は、より自由に名字を選択できるようになりました。
ただし、一度決定し戸籍に登録された名字は、原則として簡単には変更できません。家庭裁判所の許可を得るためには「やむを得ない事由」が必要となり、そのハードルは高いとされています。
そのため、帰化申請時に後悔のないよう慎重に名字を決定することが重要です。
日本に帰化する際に名字を変更するかどうかの判断は、個人の価値観や今後の生活設計に大きく左右されます。現在の外国式の名字をそのまま使用することもできますが、日本社会でのコミュニケーションや各種手続きの円滑さを考えると、日本風の名字に変更する方が有利な場面も考えられます。
例えば、ビジネスシーンや地域社会でのなじみやすさ、子供の学校生活などを考慮して、日本風の名字を選ぶ人もいます。一方で、自身のルーツやアイデンティティを尊重し、元の名字を維持することを選択する人も少なくありません。
この選択は、帰化後の生活に長く影響を及ぼすため、将来を見据えた慎重な検討が必要です。最終的には、自身のライフスタイルや重視する点に基づいて、名字を変更するかどうかを判断することになります。
帰化によって名字を変更する際、どのような名字が選ばれるかは多様ですが、いくつかの傾向が見られます。例えば、元の名字の漢字を活かしつつ、日本の読み方に合うように調整したり、日本に馴染みのある漢字を選んで新しい名字を作成するケースです。特に、元の名字の漢字を一部残し、それに「本」や「山」「田」など、日本の名字に多く見られる漢字を組み合わせることで、日本人としての新しいアイデンティティとルーツのつながりを表現しようとすることもあります。
また、全く新しい響きの名字を選ぶ人もいれば、通称として長年使用していた名字を正式なものにするケースもあります。これらの選択は、本人の希望だけでなく、日本社会への適応や将来の家族構成なども考慮して行われることが多いです。
名字を変更せず、元の外国式の名前のままで日本に帰化した場合、社会生活において多少の戸惑いや不便を感じる場面がある可能性は否定できません。例えば、相手が外国式の名字に慣れていない場合、読み方を間違えられたり、聞き返されたりすることがあるかもしれません。また、一部の心ない言動に直面することもあるかもしれませんが、一般的に日本社会が外国式の名字を持つ人々に対して差別的な態度をとるわけではありません。むしろ、多様性が尊重される現代においては、自身のルーツを示す名字を保持することが、個性として受け入れられることも増えています。
ただし、子供の学校生活や将来の就職活動など、社会的な場面での影響を懸念し、あえて日本風の名字に変更する選択をする人もいます。重要なのは、名字の選択が個人の自由であり、その選択が社会生活に与える影響を理解した上で、自身にとって最適な道を選ぶことです。
| 順位 | 選択された苗字 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 金本 | 22.5% |
| 2 | 木村 | 14.6% |
| 3 | 新井 | 11.2% |
| 4 | 山本 | 10.1% |
| 5 | 木下 | 9.0% |
| 5 | 高木 | 9.0% |
| 7 | 金田 | 6.7% |
| — | その他 | 16.9% |
日本に帰化した中国人に多く見られる名字としては、「金本」が22.5%と最も多く、次いで「山本」が14.6%、「金田」が11.2%と続きます。その他、「新井」が10.1%、「木村」と「高木」がそれぞれ9.0%、「木下」が6.7%を占めるという調査結果があります。これらの名字以外にも、「白川」「畑」「田中」「高野」「加藤」「山田」「武田」「世羅」などが選択される傾向が見られます。これらの名字は、日本の一般的な名字であると同時に、財や地名に由来するものが多く選ばれていることが特徴です。中国の名字は「王」「李」「張」などが多く、特に「王」は中国国内で約9288万人、総人口の7.25%を占めるとされています。中国人の姓は漢字1文字の単姓が主流で、「李」「王」「張」「趙」「劉」の五大姓で中国総人口の22%を占めるとも言われています。
日本に帰化する際に、中国の簡体字は使用できないため、常用漢字や人名用漢字にない場合は、漢字を変換または変更する必要があります。また、元の中国の名字がそのまま使用できない場合でも、関連する漢字や響きを考慮して、新しい日本の名字を選ぶケースが多いようです。
| 順位 | 選択された苗字 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 金本 | 20.7% |
| 2 | 木村 | 14.1% |
| 3 | 新井 | 10.9% |
| 4 | 山本 | 9.8% |
| 5 | 木下 | 7.6% |
| 6 | 高木 | 6.5% |
| 7 | 金田 | 5.4% |
| — | その他 | 25% |
日本に帰化する韓国人が選ぶ名字には、特定の傾向が見られます。中でも金本が20.7%で最も多く、次いで木村が14.1%、新井が10.9%、山本が9.8%と続きます。その他、木下(7.6%)、高木(6.5%)、金田(5.4%)といった名字も多く見られます。韓国で最も多い名字は金(キム)で、全人口の5分の1を占め、次いで李(イ)、朴(パク)が続きます。帰化韓国人に多い名字には、元の韓国の名字の漢字を活かした「金本」や、全く異なる日本の地名や財をイメージさせる「新井」などが選ばれる傾向があります。これは、自身のルーツと日本の社会に馴染むことを両立させたいという希望が反映されていると考えられます。特に「李」姓を持つ場合、日本の名字に「木」や「高」といった漢字が含まれる「木下」や「高木」などが選択肢となることがあります。
このように、元の名字の発音や漢字を意識しつつ、日本社会で違和感なく受け入れられる名字を選ぶ傾向が強いと言えるでしょう。
特定の名字が帰化する人に多く選ばれる背景には、いくつかの理由が考えられます。まず、元の国籍の名字と関連性が高い名字を選ぶ傾向があります。例えば、韓国に多い金姓の人が金本や金田といった名字を選ぶのは、元の名字の漢字をそのまま残したいという思いがあるためです。同様に、李姓の人が木下や高木を選ぶのは、李が木を意味することや、発音が類似していることなどが理由として挙げられます。
次に、日本社会で一般的で、かつ特定の地域や階層を想起させない無難な名字が好まれる傾向もあります。これにより、帰化後に周囲から不必要に目立つことなく、スムーズに社会に溶け込みたいという心理が働いていると考えられます。また、日本における通名として多く使用されてきた名字が、そのまま帰化後の本名として選ばれるケースも少なくありません。通名は、在日韓国人などが日常生活で用いる日本式の名前であり、長年の使用実績があるため、その名字に愛着や慣れがあることも理由の一つです。
さらに、行政書士などの専門家から、申請手続きの際に日本人らしい名字を選ぶようアドバイスを受けることもあるため、そうした影響も考えられます。
在日韓国人の名字の傾向は、帰化後の名字の選択に大きな影響を与えています。多くの在日韓国人は、日常生活で「通名」と呼ばれる日本式の名前を使用しており、この通名が、帰化後の正式な名字として選択されるケースが多く見られます。在日韓国人に多い通名としては、「新井」や「金本」、「山本」、「木村」などが挙げられます。これらの名字は、日本の一般的な名字であると同時に、元の韓国の名字に漢字の共通点があるものや、響きが自然なものが選ばれやすい傾向にあります。
例えば、韓国に多い「金」姓を持つ人が「金本」や「金田」を選ぶのは、元の名字の漢字を活かしつつ、日本の名字としても自然であるためと考えられます。また、「李」姓の人では「木下」や「高木」が通名として用いられることがあり、これも日本の名字として違和感が少ないためでしょう。通名を持つ在日韓国人の中には、日本の学校や職場で通名を使用することで、社会生活を円滑に進めてきたという背景があります。そのため、帰化後も長年慣れ親しんだ通名をそのまま本名として選択することは、自然な流れと言えるでしょう。
一方で、近年では、元の民族名をあえて使用する人や、日韓両方で使える名前を選ぶ人も増えており、名字に対する意識も多様化しています。しかし、依然として、社会的な適応やスムーズな生活を重視する観点から、在日韓国人の通名に見られる名字が帰化後の名字として多く選ばれる傾向は続いています。
日本に帰化した中国人の名字は、いくつか特徴的な傾向が見られます。中国の名字は「王」「李」「張」などが非常に多く、人口の大部分がこれらの名字を名乗っています。帰化する中国人も、自身の元の名字の漢字を活かしつつ、日本の名字として自然な響きや意味を持つものを選ぶ傾向があります。例えば、「金」や「山本」、「金田」といった名字が、帰化した中国人に多く見られる例として挙げられます。これは、中国の漢字を日本の漢字に変換しやすいことや、日本の名字に多く存在する漢字や組み合わせを選ぶことで、社会への適応をスムーズにしたいという意図が考えられます。
ただし、中国の簡体字は日本の戸籍に登録する際に使用できないため、常用漢字や人名用漢字にない場合は、漢字を変換したり、別の漢字を選んだりする必要があります。また、法務局での帰化申請の際に「日本人らしい名字にしてください」とアドバイスを受けるケースも過去にはありましたが、近年ではそのような指導は減少しているようです。
しかし、帰化後の名字が社会生活に与える影響を考慮し、周囲から自然に受け入れられる名字を選ぶ傾向は依然として強いと言えるでしょう。
国際結婚においては、夫婦の名字の選択肢が日本人同士の結婚とは異なり、原則として夫婦別姓が認められています。日本では、結婚に際して夫婦どちらかの名字に統一することが戸籍法で定められていますが、日本人と外国人の国際結婚の場合、外国人のパートナーには日本の戸籍がないため、夫婦は別姓となるのが一般的です。
しかし、夫婦同姓を希望する場合は、日本人が外国人パートナーの名字に変更したり、外国人パートナーが日本人の名字を名乗ったりすることが可能です。さらに、両方の名字をつなげた「複合姓」を選択するケースも一部で見られます。これらの名字の選択は、結婚から6ヶ月以内に役所で手続きを行うことで変更できますが、外国人パートナーが日本人の名字を名乗る場合は、母国の法律による本名の変更や、日本での通称名の登録が必要となる場合があります。
名字の選択は、家族としての絆やアイデンティティ、そして将来の子どもの名字にも影響を与えるため、夫婦で十分に話し合い、それぞれの価値観やライフスタイルに合った選択をすることが重要です。
外国籍の方との結婚における名字の取り扱いは、日本人同士の結婚とは異なり、いくつかの選択肢が存在します。日本では戸籍制度に基づき夫婦同姓が原則ですが、外国人には戸籍がないため、日本人と外国籍のパートナーが結婚した場合、原則として夫婦別姓となります。これは、日本の戸籍に外国籍のパートナーの名前が記載されるものの、戸籍自体は日本人側のものになるためです。
しかし、夫婦同姓を希望する場合は、「外国人との婚姻による氏の変更届」を提出することで、日本人側が外国籍パートナーの名字に変更することが可能です。この手続きは結婚から6ヶ月以内に行う必要があり、比較的簡易な手続きで済みます。また、外国籍のパートナーが日本人の名字を名乗ることを希望する場合もあります。この場合、外国人側の母国の法律によって本名を変更するか、日本で通称名を登録するといった方法が考えられます。
さらに、夫婦それぞれの名字を組み合わせた「複合姓」という選択肢も存在します。これは、家庭裁判所に申し立てを行い、許可を得ることで可能となりますが、正当な理由が必要とされ、手続きも煩雑になる場合があります。夫婦が名字を選択する際には、日常生活での利便性、社会的な認識、そして将来生まれる子どもの名字をどうするかといった点を考慮し、慎重に話し合いを進めることが大切です。
名字の選択は、家族のアイデンティティや絆にも深く関わるため、お互いの文化や価値観を尊重し、納得のいく選択をすることが重要です。
日本への帰化や国際結婚における名字の選択は、個人のアイデンティティと社会生活の円滑さを両立させる上で重要な決断です。帰化においては、元の国籍の名字を維持することも、日本風の新しい名字に変更することも可能ですが、一度決定すると原則として変更が難しいため、慎重な検討が求められます。特に、中国人や韓国人の方々においては、元の名字の漢字を活かした「金本」や「金田」、あるいは日本社会に馴染みやすい「山本」「木村」「新井」といった名字が多く選ばれる傾向にあります。これは、ルーツを意識しつつも、日本での生活にスムーズに適応したいという思いが反映されていると考えられます。
名字の変更を行わない場合、社会生活で稀に読み間違えられたり、珍しい名字として注目されたりする可能性はありますが、それが直接的な差別につながるケースは限定的です。多様性が尊重される現代において、自身のルーツを示す名字を保持することは、個性として受け入れられることも増えています。国際結婚の場合も、夫婦別姓が原則であるものの、夫婦同姓や複合姓を選択する柔軟な制度があります。
最終的にどのような名字を選択するかは、個人の価値観やライフスタイル、将来設計によって異なります。帰化や結婚を検討している方は、自身の状況を総合的に判断し、後悔のない名字選びをすることが重要です。
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