三輪美幸
行政書士法人GOALのVISAチームリーダー。これまでの豊富なビザ申請経験をもとに、日本で暮らしたい外国人の皆様向けに、日々のお困りごとを解決できるよう寄り添った記事を執筆するよう心がけています!
[身分系ビザ]
目次
日本で生活する外国人にとって、「定住者」と「永住者」はどちらも重要な在留資格です。これらは就労活動に制限がない点で似ていますが、在留期間の更新の有無や社会的信用度など、いくつかの重要な違いがあります。
これらの違いを正しく理解することは、ご自身の状況や将来のライフプランに合った在留資格を選択する上で不可欠です。
本記事では、「定住者」の在留資格の概要と、「永住者」との具体的な違いについて詳しく解説します。
「定住者」とは、法務大臣が特別な理由を考慮して、日本での居住を認める外国人に与えられる在留資格です。この資格の大きな特徴は、原則として就労活動に制限がない点にあります。学歴や職歴に関わらず、公序良俗に反しない限り、様々な職業に就くことが可能です。
ただし、「永住者」とは異なり、6ヶ月、1年、3年、5年といった在留期間が定められており、期間満了後も日本での滞在を希望する場合は、在留期間の更新手続きを行わなければなりません。主な対象者としては、日系人やその配偶者、あるいは日本人と離婚・死別した元配偶者、家族などが挙げられます。
「定住者」と「永住者」は、共に日本での活動に大きな制限がない点で共通していますが、両者の間には見過ごせない違いがいくつか存在します。特に重要な比較ポイントは、次の3点です。
これらの違いを把握することは、自身のキャリアプランや生活設計を考える上で非常に重要となり、どちらの在留資格がより適しているかを判断する基準となります。
両者の最も明確な違いは、在留期間の更新手続きの有無です。「永住者」の在留資格は、その名の通り在留期間が無期限であり、在留資格自体の更新手続きは必要ありません。7年ごとに在留カードの有効期間の更新は必要ですが、審査はなく身分は安定しています。
一方、「定住者」には在留期間に定めがあり、付与された期間(例:1年、3年、5年)が満了する前に、出入国在留管理局で在留期間更新許可申請を行う必要があります。この更新が不許可となれば、日本に滞在し続けることはできなくなります。
この点が、日本での生活の安定性に大きく影響します。
一般的に、社会的信用度においては「永住者」の方が「定住者」よりも高いと評価されます。これは、永住許可の審査が、長期間の日本での居住実績、素行の善良さ、安定した生計など、より厳格な要件に基づいて行われるためです。
在留期間が無期限であるという安定性から、永住者は住宅ローンや事業資金の融資、クレジットカードの申し込みといった各種の信用審査において有利になることが多いです。定住者も日本での安定した生活基盤が認められていますが、在留期間の更新という不確定要素があるため、永住者と比較すると信用面で差が生じる場合があります。
在留資格が取り消される可能性についても、両者には違いがあります。
どちらの資格も、退去強制事由に該当する重大な法令違反(例:1年を超える懲役刑の実刑判決)を犯した場合には、在留資格を失う可能性があります。
しかし、「永住者」は他の在留資格と比べてその地位が強く保障されています。例えば、虚偽の申請や正当な理由なく在留活動を行わないといった、通常の在留資格取消事由の一部が適用されにくい立場にあります。
一方で「定住者」は、在留期間の更新時に素行などが改めて審査されるため、その時点で問題があれば更新が不許可になるリスクがあります。
「定住者」の在留資格は、特定の身分や特別な事情を持つ外国人を対象としています。その対象者は、法務省の告示によって具体的に定められている「告示定住者」と、告示には該当しないものの、個別の事情を人道的な観点から考慮されて許可される「告示外定住者」の2種類に大別されます。
自身がどちらのケースに該当する可能性があるのかを把握することが、申請準備の第一歩となります。
「告示定住者」とは、法務大臣が告示で定めている特定の地位や身分を持つ外国人を指します。これに該当する代表的な例としては、日系2世や日系3世、かつて日本国籍を保有していた者の実子などが挙げられます。
また、「永住者」や「定住者」の配偶者、あるいはその扶養を受けて生活する未成年で未婚の実子(連れ子)も対象に含まれます。さらに、条約に基づいて難民認定を受けた者や、中国残留邦人及びその親族なども、この告示定住者として扱われます。
これらのケースでは、告示で定められた要件を満たしていることを客観的な資料で証明し、申請手続きを進めることになります。
「告示外定住者」とは、告示には明記されていないものの、個別の事情を考慮した結果、法務大臣の裁量によって定住者としての在留が特別に認められるケースです。この典型例として、日本人、永住者、または特別永住者と婚姻し、配偶者ビザで暮らしていた外国人が、相手方と離婚または死別した後も、引き続き日本での生活継続を希望する場合が挙げられます。
この判断においては、婚姻期間の長さ、日本での生活歴、子どもの有無、生活の安定性などが総合的に審査されます。その他、日本人の実子を扶養する外国人親なども、個々の状況に応じて告示外定住者として認められる可能性があります。
定住者と永住者は、共に就労制限がなく日本で自由に暮らせる在留資格ですが、その性質には明確な違いがあります。最も大きな違いは、定住者には在留期間の定めがあり更新が必要な一方、永住者の在留期間は無期限である点です。この差は、住宅ローンの審査などの社会的信用度や、在留資格自体の安定性に直接影響を及ぼします。
定住者は日系人や特定の身分を持つ外国人を主な対象とするのに対し、永住者は原則として10年以上日本に在留し、素行が善良であることなどが求められます。