三輪美幸
行政書士法人GOALのVISAチームリーダー。これまでの豊富なビザ申請経験をもとに、日本で暮らしたい外国人の皆様向けに、日々のお困りごとを解決できるよう寄り添った記事を執筆するよう心がけています!
[身分系ビザ]
ベトナムへの海外移住や長期滞在を検討している方にとって、現地の生活はどのようなものなのか、その全体像を把握することは非常に重要です。この国での生活には多くのメリットがある一方で、考慮すべきデメリットも存在します。
本記事では、ベトナム移住のメリットやデメリットについて解説していきます。
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ベトナムへの移住には魅力的なメリットが多く存在します。特に生活面においては日本と比べて様々な利点を感じられるでしょう。
ベトナムの生活費は、日本や欧米諸国と比較して安価です。特に、家賃や食費、交通費などが安く、限られた予算でも快適な生活を送れる点が大きなメリットと言えます。都市部での一人暮らしの場合、月々の生活費は家賃を含めて10万円から15万円程度が目安とされており、工夫次第では月5万円から10万円の貯蓄も可能とされています。アパートの家賃は都市部でも数万円から数十万円と幅広く、食費は外食中心でも月数千円から1万円程度に抑えられます。
屋台料理であれば1食あたり数百円と非常に安価ですが、食事の選択によって費用は大きく変動します。物価は近年上昇傾向にありますが、それでも現時点では日本に比べて安価であることは変わらず、お金の面で移住しやすい環境が魅力です。
ベトナムは急速な経済成長を遂げており、ビジネスチャンスが豊富にあります。特にIT産業の成長が著しく、日本人IT技術者の需要が高まっています。また、日本企業の進出に伴い日本語学習者が増加しており、日本語教師の需要も高いです。貿易関連の仕事や飲食店経営、観光ガイドなども日本人にとって働きやすい職種として挙げられます。
ベトナムでは残業が比較的少なく、リラックスした労働環境で仕事ができることもメリットです。就労ビザの取得には原則として社会人経験3年以上かつ4年制大学卒以上が条件ですが、5年以上の実務経験でも取得が可能な場合もあります。給与水準は日本ほど高くないものの、現地の物価を考慮すると比較的良い生活を送ることができます。ベトナムでの仕事探しは、現地のキャリアアドバイザーや求人サイトを活用するとスムーズに進められます。
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ベトナムは東南アジアの中心に位置しており、周辺国へのアクセスが非常に便利です。
例えば、人気のある観光地であるタイやマレーシアへも比較的短時間で移動できます。これは、週末の旅行やビジネスでの出張において大きなメリットとなり、多様な文化や環境に触れる機会を増やしてくれます。日本からも飛行機で約6時間と比較的近く、一時帰国もしやすい距離にあります。このような地理的な優位性は、海外での生活をより豊かで刺激的なものにする上で重要な要素と言えるでしょう。
ベトナム料理はフォーや生春巻きなど、お米をベースにした料理が多く、日本人の味覚に合いやすいことで知られています。味付けはタイほど辛くなく、醤油風味で食べやすい特徴があります。フランス統治時代の名残から、バインミーなどのパン料理も豊富にあり、食事の選択肢が広いのも魅力です。地元のB級グルメも豊富で、様々な麺類などを手軽に楽しむことができます。
さらに、ベトナムではカフェ文化が浸透しており、どのカフェでもインターネット環境が良好なため、リモートワークも可能です。このように、食事が豊かで健康的であることは、ベトナムでの生活を快適にする大きな要素です。
ベトナムは親日的な国として知られています。街中で日本人であることがわかると、フレンドリーに接してくれる人が多いです。また、日本車のホンダやカップ麺のエースコックなど、日本のブランドがベトナムの生活に深く根付いており、日本人にとって生活しやすい環境が整っています。
ベトナムに居住する日本人も約2万人と多く、日本人コミュニティも充実しているため、移住後も安心して生活を始められるでしょう。
※ジェトロ調査:在ベトナム日本人数
ベトナムは南北に細長い国土を持つため、地域によって気候は異なりますが、全体的に温暖な気候が特徴です。南部のホーチミンは一年中30度前後と常夏の気候で、北部のハノイも冬は多少寒くなるものの、日本の冬に比べると比較的過ごしやすいです。年間を通して温暖なため、寒い季節を避けたい人にとっては理想的な移住先と言えます。ニャチャンやフエなどのリゾート地も一年を通して過ごしやすい気候で、観光やレジャーを楽しむのに適しています。温暖な気候は、屋外での活動やレジャーを楽しむ機会を増やし、日々の生活に活気を与えてくれます。
ベトナムは美しいビーチや自然豊かなリゾート地が豊富にあります。ニャチャンやフエといった場所への移動も国内線や鉄道、バスなどで比較的容易に行うことができます。国内の移動費用も日本に比べて安価なため、気軽にリゾート地を訪れ、リフレッシュすることが可能です。
例えば、リゾート地ではダイビングやマッサージが日本よりも大幅に安く楽しめるため、休日を充実させたい方にとっては大きな魅力となります。豊かな自然環境とアクセスの良さは、ベトナムでの生活の質を高める要素の一つです。
ベトナムへの移住には多くのメリットがある一方で、事前に把握しておくべきデメリットも存在します。快適な生活を送るためには、これらの課題に対する準備が不可欠です。
ベトナム語は声調言語であり、習得には時間がかかると言われています。日常生活では英語が通じる場所も増えていますが、地方やローカルな場所ではベトナム語が必須となる場面も少なくありません。特に公的手続きや緊急時には、言語の壁が大きな障壁となる可能性があります。
ベトナム語を習得することは、現地での生活を円滑にし、より深く文化を理解するために非常に重要です。移住を検討する際は、基本的なベトナム語の学習を始めることをおすすめします。
ベトナムの気候は地域によって異なりますが、特に南部は一年を通して高温多湿です。この気候は日本人にとっては慣れるまでに時間がかかる場合があります。暑さや湿気による体調不良や冷房の使用による体調管理も重要になります。特に雨季には激しいスコールに見舞われることもあり外出や交通に影響が出ることもあります。
日本の四季に慣れている人にとっては、この気候の違いに適応するための準備や心構えがベトナムでの生活を快適に送る上で大切になります。
ベトナムは社会主義国家であり、法制度や社会システムが日本とは異なります。外国人向けの法律や規制も複雑で、ビザの取得や更新、土地や不動産の所有に関する制限など、理解しておくべき点が多数あります。特に長期滞在やビジネスを検討する場合は、現地の法律に精通した専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。
法制度の違いを理解し、適切に対応することで、トラブルを未然に防ぎ、安心して生活を送ることができます。
ベトナムの衛生環境は、日本と比較して劣る点があるため注意が必要です。水道水は飲用に適しておらず、ミネラルウォーターの利用が必須です。また、食品の衛生管理も日本ほど徹底されていない場合があり、食中毒のリスクも考えられます。特に屋台やローカルな飲食店では注意が必要です。蚊を媒介とするデング熱やジカ熱、日本脳炎といった感染症のリスクもあり、虫よけ対策や予防接種も重要になります。
医療水準も全体的に日本より低い傾向があるため、重篤な病気や怪我の場合は、設備の整った私立病院や国外での治療を検討する必要があるでしょう。海外旅行保険への加入など、医療面での準備をしっかり行うことが、安心して生活を送る上で非常に大切です。
ベトナムは近年経済成長に伴い物価が上昇傾向にあります。特に都市部では日本食レストランや輸入食材など一部の品目の価格は日本よりも高くなる場合もあります。また経済状況によって為替レートが変動し日本円からベトナムドンへの両替レートが不利になる可能性もあります。これにより予想以上に生活費やお金がかかることも考えられます。長期滞在を計画する際は物価の変動リスクも考慮に入れ余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
ベトナムに長期滞在するためには、目的に合った適切なビザの取得が不可欠です。ベトナムにはいくつかの種類のビザが存在し、それぞれ異なる条件や取得方法があります。観光目的の短期滞在を除き、45日を超える滞在やビジネス目的での入国にはビザの申請が必要です。ここでは、主なビザの種類とその取得方法について解説します。
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日本国籍の場合、ベトナムへの観光目的の滞在は45日以内であればビザが免除されます。しかし、45日を超える短期滞在を希望する場合は、別途観光ビザの取得が必要です。観光ビザは最長3ヶ月間の滞在が可能で、オンラインまたはベトナム大使館・領事館で申請できます。最初に現地の雰囲気を知るために短期で滞在するには観光ビザがおすすめです。
1回の延長は可能ですが、費用が高くなるため注意が必要です。観光ビザには一度出国すると無効になる「シングルビザ」と、期間内に何度でも出入国が可能な「マルチビザ」の2種類があり、目的に応じて選択できます。
ベトナムで働くことを目的とする日本人には就労ビザ(LDビザ)が必要です。このビザは、ベトナムでの雇用契約に基づき取得するもので、通常3ヶ月から3年間の滞在が可能です。就労ビザの申請には、雇用主が保証人となり、労働許可書を先に取得することが一般的です。
労働許可書と就労ビザは別物である点に注意が必要です。労働許可証の取得には原則として社会人経験3年以上かつ4年制大学卒以上の学歴が求められますが、5年以上の実務経験でも可能な場合があります。書類の準備から取得まで合計で4ヶ月程度かかることがあり、年末年始や旧正月(テト)期間は手続きに時間がかかるため、余裕を持った準備が求められます。
ビジネスや長期出張目的でベトナムに滞在する場合、商用ビザ(DNビザ)が必要です。商用ビザは1ヶ月から3ヶ月の滞在が可能で、ベトナムの企業や外資企業の支店で働く外国人、またはその他専門組織の代表者が主に取得します。ビジネスビザを取得するには、オンライン申請(e-visa)またはベトナムの大使館・領事館で申請しますが、企業からの招聘状が必要となる場合があります。
商用ビザには、ベトナムの法律に基づく法的地位を持つ企業やその他の組織で働く外国人向けのDN1と、ベトナムが加盟している国際条約に従ってサービス提供や商業プレゼンス確立を行う外国人向けのDN2があります。
ベトナムに投資を行う個人事業主や投資家向けには、投資家ビザ(DTビザ)が用意されています。このビザは、ベトナムでビジネスを展開する人や投資を行う人が取得するビザです。投資家ビザの取得には一定の条件が設けられており、永住権の取得にもつながる可能性があります。具体的な条件や手続きについては、ベトナムの法律や関連機関の情報を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
就労ビザなどを取得してベトナムに長期滞在する場合、一時滞在許可証(TemporaryResidenceCard)の取得も必要となります。これはビザとは別に発行されるもので、労働許可証と就労ビザを取得した後に申請する流れが一般的です。一時滞在許可証は長期滞在を可能にするための重要な書類であり、有効期間はビザの期間と連動しています。
また、就労ビザなどの特定のビザを取得した外国人の配偶者や18歳未満の子ども、またはベトナム国民の親、配偶者、子どもには、家族帯同ビザ(TTビザ)が発行される場合があります。このビザの有効期間は最長で2年間となります。
ベトナムでの長期滞在を成功させるためには、事前にいくつかの留意点を把握し、入念な準備を行うことが重要です。
ベトナムには、他国にあるような一般的な「長期滞在ビザ」や「定住プログラム」が明確に存在しないという特徴があります。そのため、観光目的での短期滞在を除き、1年以上滞在を希望する場合は、就労ビザ、投資家ビザ、家族帯同ビザ、学生ビザなど、特定の目的に応じたビザを取得する必要があります。
これらのビザは、ベトナムでの活動内容によって細かく分類されており、取得条件もそれぞれ異なります。自分の滞在目的を明確にし、それに合致するビザの種類と条件を十分に確認することが、スムーズな移住の第一歩となります。
ベトナムのビザは、取得後の延長や更新手続きが複雑である場合があります。特に、観光ビザは一度延長が可能であるものの、その後の再延長は難しく、一度出国して再度ビザを取得し直す「ビザラン」と呼ばれる方法が必要になるケースもあります。就労ビザなども、更新の際に労働許可証の再申請が必要になったり、必要な書類が変更されたりすることがあります。
これらの手続きは、現地の法律や情勢によって頻繁に変わる可能性があるため、常に最新情報を確認し、余裕を持って手続きを進めることが大切です。必要であれば、ベトナムのビザ申請を専門とする代行業者や法律事務所に相談することも検討しましょう。
ベトナムの医療水準は日本と比較してまだ発展途上であると言えます。特に地方の病院では医療設備の不足や衛生面での問題が指摘されることがあります。公立病院では医師の不足も深刻で患者への細やかなケアが期待できない場合もあります。
また診察や手術の際に前払いを求められることが多く治療費が支払えないと治療してもらえないケースも報告されています。万が一の病気や事故に備え日本語対応が可能な私立病院での受診を想定し高額な医療費をカバーできる海外旅行保険への加入は必須です。保険に加入することで安心して医療サービスを受けられるだけでなく緊急時の移送などもカバーできるため必ず準備するようにしましょう。
ベトナムでの生活では、日本とは異なる環境要因による健康リスクが存在します。年間を通して高温多湿な気候は、熱中症や食中毒のリスクを高めます。また、デング熱やジカ熱、日本脳炎といった蚊を媒介とする感染症、A型肝炎などの水や食品を介する感染症も注意が必要です。水道水は飲用できないため、ミネラルウォーターを利用し、屋台での飲食には特に注意が必要です。大気汚染も都市部では問題となっており、呼吸器系の疾患につながる可能性もあります。
日頃から手洗いやうがいを徹底し、虫よけ対策を行うなど、自己の健康管理を徹底することが、ベトナムでの生活を健やかに送るために重要です。
ベトナムへの移住を計画する際には、パスポートと航空券の準備も早期に行う必要があります。パスポートは有効期限が十分にあり、滞在予定期間をカバーしているかを確認しましょう。
ビザの申請や航空権の取得には、パスポートの残存有効期間が6ヶ月以上必要とされることが一般的です。航空券は、長期滞在の場合、片道航空券ではなく往復航空券を購入する方が良い場合もあります。また、現地での最初の滞在先を確保しておくことも重要です。アパートやホテルなど、入国後すぐに生活できる場所を事前に手配しておくと、スムーズに新生活を始められます。
ベトナムでの長期滞在を始める前に、いくつかの予防接種を受けておくことが強く推奨されます。特にA型肝炎、B型肝炎、破傷風は推奨されており、日本脳炎、季節性インフルエンザ、麻疹、風疹も望ましいとされています。生活環境によっては狂犬病や腸チフスの予防接種も考慮すべきです。狂犬病は、犬だけでなく猫やコウモリ、サルなどに噛まれることで感染し、発症すると致死率が非常に高いため、特に地方へ行く予定がある場合は事前接種が重要です。
予防接種は複数回の接種が必要な場合もあるため、渡航の4〜6週間前には計画的に接種を開始することが望ましいです。また、日本で出発前に健康診断を受けておくことで、自身の健康状態を把握し、必要な対策を講じることができます。
ベトナムに長期滞在する際、日本の国民年金に関する手続きも忘れてはなりません。海外へ移住する場合、住民票を抜くことになり、国民年金の加入義務がなくなります。しかし、将来の年金受給資格期間を確保するため、または年金額を増やすために、任意で国民年金に加入し続けることができます。
任意加入を希望する場合は、日本を出国する前に所定の手続きを行う必要があります。年金事務所や市区町村の窓口で相談し、ご自身の状況に合わせた最適な選択をすることが大切です。将来的に日本に戻る可能性や、老後の生活設計を考慮し、年金に関する手続きを適切に行いましょう。
ベトナム移住は、生活費の安さ、魅力的な働く環境、親日的な国民性、温暖な気候、豊かな食文化など、多くのメリットがあります。しかし、言語の壁、気候への適応、法制度の違い、衛生環境、物価変動リスクといったデメリットも存在します。長期滞在には目的に応じたビザの取得が必須で、就労ビザや投資家ビザなど種類が多岐にわたります。ビザの延長や更新手続きが複雑な場合もあるため、事前の情報収集と計画が重要です。
また、万が一の病気や怪我に備え、海外旅行保険への加入や予防接種、健康管理の徹底も欠かせません。これらのメリット・デメリットを理解し、入念な準備を行うことで、ベトナムでの充実した海外生活を実現できるでしょう。
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