三輪美幸
行政書士法人GOALのVISAチームリーダー。これまでの豊富なビザ申請経験をもとに、日本で暮らしたい外国人の皆様向けに、日々のお困りごとを解決できるよう寄り添った記事を執筆するよう心がけています!
[身分系ビザ]
目次
イギリス国籍者や永住権保持者をパートナーに持ち、共にイギリスで生活するためには、配偶者ビザの取得が不可欠です。このビザを申請する際には、関係性の証明や英語力など複数の条件を満たす必要がありますが、特にハードルが高いとされるのが収入や貯金の基準です。
本記事では、イギリス配偶者ビザの基本的な情報から、具体的な申請条件、そして申請にかかる総費用までを詳しく解説します。
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イギリス配偶者ビザは、イギリスに定住するパートナーと共に暮らすための滞在許可で、ファミリービザの一種に分類されます。このビザを取得することで、イギリス国内での就労や就学が原則として自由に認められます。また、規定の年数イギリスに滞在し、条件を満たすことで永住権の申請にも繋がるため、イギリス移住における重要なステップとなります。ここでは、その基本的な概要について解説します。
イギリス配偶者ビザは、イギリス国籍者またはイギリス永住権保持者のパートナーとしてイギリスに滞在するためのビザであり、「Familyvisa」のカテゴリーに含まれます。このビザは、法的に結婚している配偶者、または2年以上同棲している事実婚のパートナーが申請対象です。日本などイギリス国外から新規で申請する方法と、就労ビザや学生ビザなど、別の種類のビザで既にイギリスに滞在している人が国内で切り替える方法があります。初回のビザ期間は、国外申請の場合は2年9ヶ月、国内申請の場合は2年6ヶ月です。
配偶者ビザを取得すると、イギリス国内での活動にほとんど制限がなくなります。特に大きな利点として、フルタイムやパートタイム、自営業など、形態を問わず自由に就労できる点が挙げられます。これにより、パートナーと協力して生計を立てることが可能になります。また、就学に関しても制限はなく、語学学校から大学、大学院への留学まで、希望する教育機関で学ぶことができます。ただし、公的資金(PublicFunds)にアクセスすることは原則として認められていません。
イギリス配偶者ビザは、永住権(IndefiniteLeavetoRemain,ILR)を取得するための一般的なルートの一つです。まず初回のビザを取得後、その有効期限が切れる前に一度ビザの延長(更新)手続きを行います。この延長手続きを経て、合計5年間継続して配偶者ビザでイギリスに合法的に滞在すると、永住権の申請資格が得られます。永住権を取得すれば、ビザの更新が不要となり、滞在期間の制限なくイギリスに住み続けることが可能になります。
イギリス配偶者ビザを取得するためには、複数の厳格な申請条件をすべてクリアする必要があります。具体的には、スポンサーとなるパートナーの資格、二人の関係が本物であることの証明、そして公的資金に頼らず生活できることを示す経済的要件、さらにイギリスで生活するための最低限の英語能力要件が含まれます。特に経済的要件は複雑で、基準額も頻繁に更新されるため、入念な準備が求められます。
配偶者ビザを申請するにあたり、スポンサーとなるイギリス側のパートナーは、特定の資格要件を満たしている必要があります。まず、18歳以上であり、イギリス国籍を持っているか、イギリスの永住権(IndefiniteLeavetoRemain)を保持していることが絶対条件です。また、申請者と共にイギリスに定住する意思があることも示さなければなりません。これらの資格は、パスポートのコピーや永住権を証明する書類などを通じて、申請時に明確に証明する必要があります。
申請者とスポンサーの関係が、偽りのない本物のものであることを客観的な証拠で証明することが極めて重要です。法的に結婚している場合は、結婚証明書を提出します。また、2年以上同棲している事実婚関係の場合は、賃貸契約書や公共料金の請求書、共同名義の銀行口座明細書など、二人が同じ住所に住んでいたことを示す書類が必要です。これらに加え、交際期間中の写真やメッセージのやり取り、共通の友人からの手紙など、関係性の継続性や信憑性を補強する資料を複数用意することが求められます。
配偶者ビザ申請において、最も厳格で重要視されるのが経済的要件です。これは、申請者とパートナーがイギリスの公的資金に頼ることなく、安定した生活を送れるだけの経済力があることを証明するためのものです。この基準を満たすためには、主にスポンサー(または申請者)の年収が規定額以上であること、あるいは基準に満たない年収を補うための十分な貯金があることを証明する必要があります。基準額は政府の方針により変更されるため、申請時点での最新情報を確認することが不可欠です。
配偶者ビザの経済的要件で求められる最低年収額は、扶養する子供の有無によって変動します。2024年4月11日より、子供がいないカップルの場合の最低年収基準は£29,000に引き上げられました。この基準額は今後さらに段階的に引き上げられる計画が発表されています。申請にイギリス国籍ではない子供を含める場合、さらに高い年収の証明が必要となる可能性があります。ビザ申請を計画する際は、英国政府の公式サイトでその時点での正確な年収基準を確認することが必須です。
スポンサーの年収が最低基準額に満たない場合でも、一定額以上の貯金があれば経済的要件を満たすことが可能です。不足する年収額を補うために必要な貯金額は、特定の計算式を用いて算出します。その計算式は、「(最低年収基準額−現在の年収)×2.5年+£16,000」です。この計算で求められた金額以上の貯金を、申請前の6ヶ月間以上、継続して保有していることを銀行の取引明細書などで証明する必要があります。年収が全くない場合は、全額を貯金で証明することもできます。
経済的要件の証明に使用できる収入源は厳格に定められています。認められる収入には、雇用による給与所得、自営業からの利益、年金(公的または私的)、不動産からの賃貸収入、株の配当金などがあります。一方で、友人や家族からの金銭的援助、各種手当などの公的扶助、一時的な収入などは原則として認められません。どの収入源を利用するかに応じて、給与明細、確定申告書、銀行取引明細書など、指定された証明書類を正確に提出することが求められます。
経済状況を証明するために提出する書類は、収入の種類によって異なります。雇用されている場合は、過去6ヶ月分の給与明細と、それに対応する期間の銀行取引明細書、そして雇用主からの雇用形態、役職、勤続期間、年収を記載したレターが必要です。自営業の場合は、過去1〜2会計年度の確定申告の記録や会計士による証明書が求められます。貯金で要件を満たす場合は、過去6ヶ月間、資金が規定額を下回っていないことを示す銀行取引明細書の提出が必須となります。
イギリス配偶者ビザの申請者は、イギリスでの日常生活に支障がない最低限の英語能力があることを証明する必要があります。具体的には、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)でA1レベル以上のスピーキングとリスニング能力が求められます。この要件は、イギリス社会への円滑な統合を促す目的で設定されており、証明方法は主に指定された英語試験の合格によりますが、特定の学歴を持つ場合など、試験が免除されるケースも存在します。
英語能力を証明するためには、英国内務省(HomeOffice)が認定したテストプロバイダーが実施する特定の試験に合格する必要があります。一般的に最もよく利用されるのは、「IELTSforUKVI(LifeSkills)」のA1レベルです。このテストは、スピーキングとリスニングの能力のみを評価する15分程度の短い試験で、合否で判定されます。受験する際は、必ず「forUKVI」と明記された、ビザ申請用のテストであることを確認して予約することが重要です。
英語の試験を受けずに英語能力要件を満たす方法も存在します。一つは、英語で教えられた大学の学位(学士号以上)を取得している場合です。この場合、その学位がイギリスの学士号と同等以上であること、そして授業が英語で行われていたことを証明するEcctis(旧UKNARIC)発行の証明書を取得し、学位証明書と共に提出します。また、アメリカやオーストラリアなど、特定の英語圏の国籍を持つ申請者は、英語テストの提出が免除されます。
イギリス配偶者ビザの申請には、申請料金の他に、IHS(ImmigrationHealthSurcharge)と呼ばれる国民保健サービスへの加入料など、複数の費用がかかります。これらの費用は申請する場所(イギリス国内か国外か)によって金額が異なり、総額は高額になります。また、標準の審査期間よりも早く結果を得たい場合は、オプションとして優先サービスを利用でき、その場合は追加料金が発生します。
日本など、イギリス国外から配偶者ビザを新規申請する場合の費用は、申請料が1,523ポンドです。これに加えて、イギリスの国民保健サービス(NHS)を利用するための費用であるIHS(ImmigrationHealthSurcharge)を支払う必要があります。IHSは年間1,872ポンドで、申請料とIHSを合わせると、総額で3,395ポンドの費用が必要です。
学生ビザや就労ビザなど、有効なビザで既にイギリスに滞在している人が、国内で配偶者ビザに切り替える場合、申請料は1,033ポンドとなり、国外からの申請よりも安く設定されています。ただし、IHSは国外申請と同様に支払う義務があります。IHSは1,560ポンド、申請料とIHSを合わせた総額は2,593ポンドとなり、日本円での支払額は為替レートにより変動します。
配偶者ビザの標準的な審査期間は、国外申請で最大24週間、国内申請で8週間程度とされていますが、追加料金を支払うことで審査を早める「優先サービス(PriorityService)」を利用できる場合があります。このサービスを利用すると、審査期間を数週間から数営業日に短縮することが可能です。料金や利用可否は、申請するビザセンターや時期によって大きく異なります。急いで渡英する必要がある場合や、長期間パスポートを預けることが難しい場合に有効な選択肢となります。
イギリス配偶者ビザの申請は、多くの書類準備と複雑な条件のクリアが求められるため、いくつかの注意点があります。特に、二人の関係性を証明する証拠は継続的に収集しておくことが重要です。また、ビザの規定は頻繁に変更されるため、常に公式サイトで最新の情報を確認する習慣が不可欠となります。手続きの複雑さから、時には専門家の助けを借りることも視野に入れるべきです。
申請において、二人の関係が真実かつ継続していることを証明するのは申請者の責任です。結婚証明書や婚姻届の提出だけでは不十分で、審査官を納得させるための客観的な証拠が求められます。例えば、共に写っている日付のわかる写真、二人の名前が併記された賃貸契約書や公共料金の請求書、共同名義の銀行口座の明細書などが有効です。このような書類は、交際中から意識的に保管し、関係の歴史を物語る証拠として継続的に集めておくことが、スムーズな申請につながります。
イギリスの移民法は非常に流動的で、ビザの申請条件、必要書類、申請料金などは頻繁に改定されます。特に2024年には、経済的要件である最低年収基準が大幅に引き上げられるなど、大きな変更がありました。個人のブログや古い情報サイトの内容を鵜呑みにすると、誤った情報に基づいて準備を進めてしまうリスクがあります。申請を検討する際は、必ず英国政府の公式サイト(GOV.UK)にアクセスし、最新の公式ガイダンスを確認することが不可欠です。
イギリス配偶者ビザの申請プロセスは、要求される書類が多岐にわたり、各要件の解釈も複雑です。特に、収入源が複数ある場合や、過去にビザ申請で問題があった場合など、個別の状況によっては判断が難しいケースも少なくありません。申請に少しでも不安がある場合は、移民法を専門とする弁護士やビザ申請代行業者に相談することも有効な手段です。専門家の助言を得ることで、書類の不備による却下のリスクを低減させ、より確実な申請準備を進めることができます。
イギリス配偶者ビザの申請は、イギリスでパートナーと生活するための重要な手続きですが、その道のりは決して平坦ではありません。スポンサーの資格、二人の関係性の証明、英語能力、そして特にハードルの高い経済的要件といった、数多くの厳格な条件を一つひとつクリアしていく必要があります。ビザの規定は頻繁に更新されるため、英国政府の公式サイトで常に最新の情報を確認し、計画的に準備を進めることが成功の鍵を握ります。必要に応じて専門家のサポートも活用しながら、着実に準備を進めてください。
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