三輪美幸
行政書士法人GOALのVISAチームリーダー。これまでの豊富なビザ申請経験をもとに、日本で暮らしたい外国人の皆様向けに、日々のお困りごとを解決できるよう寄り添った記事を執筆するよう心がけています!
[身分系ビザ]
目次
日本での安定した生活基盤を築く上で、在留期間「5年」の取得は非常に重要です。しかし、誰もが簡単に取得できるわけではないものです。
本記事では、在留期間がどのように決まるのかという基本から、最長である5年の在留期間を得るための具体的な条件・要件、申請のポイント、そして注意すべき点について詳しく解説します。
在留期間は、出入国在留管理庁が個別の審査を通じて決定します。審査では、申請者本人の在留状況や活動内容、勤務先の企業の規模や安定性、過去の在留実績など、さまざまな要素が総合的に判断されます。
法律で定められた在留資格ごとに「5年、3年、1年、6か月」などの期間が設定されており、どの期間が付与されるかは審査官の裁量に委ねられています。そのため、同じ在留資格を持つ人でも、与えられる在留期間は異なる場合があります。最長の在留期間である「5年」を取得することは、日本での生活の安定性が高く評価された証しといえます。
最長の在留期間である5年を取得するためには、いくつかの重要な条件をクリアしなければなりません。これらの条件は、申請者個人の状況だけでなく、所属する勤務先の信頼性も大きく関わってきます。
入管は、申請者が日本で安定的かつ継続的に活動できるかを厳しく審査するため、これから説明する4つの基準をすべて満たしていることが求められます。
在留期間5年を取得するための重要な要素として、勤務先企業の安定性と継続性が挙げられます。出入国在留管理庁は、企業の規模や経営状態に応じて「カテゴリー1」から「カテゴリー4」までの4つの区分に分けて管理しています。
このうち、カテゴリー1やカテゴリー2に属する社会的に信用度の高い企業に勤務している場合、そこで働く外国人も安定した生活を送れると判断され、最長の在留期間が付与されやすくなります。自身の勤務先がどのカテゴリーに該当するかを把握することは、在留期間を予測する上で一つの目安となります。
カテゴリー1に分類されるのは、日本の証券取引所に上場している企業、保険業を営む相互会社、日本の国や地方公共団体、これらに準ずる公的な機関です。
これらの組織は、事業の安定性や継続性、法令遵守の観点から社会的な信頼が非常に高いとみなされています。そのため、カテゴリー1の組織に所属する申請者は、長期にわたる安定した雇用が見込まれると判断され、最長の在留期間である5年を許可される可能性が極めて高くなります。また、在留資格の申請手続きにおいても、提出書類の一部が免除されるといった優遇措置を受けられます。
カテゴリー2は、前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表において、源泉徴収税額が1,000万円以上ある企業や団体が該当します。上場はしていないものの、相当程度の規模と安定した経営基盤を持つ中堅企業などが主に含まれます。
カテゴリー1と同様に、事業の安定性が高いと評価されるため、このカテゴリーに所属する申請者も在留期間5年を許可される可能性が高いです。非上場企業であっても、納税実績を通じて経営の安定性を客観的に示すことができれば、審査において有利に働きます。
入管における企業カテゴリー3とは、前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の源泉徴収税額が1,000万円未満の企業・団体を指し、一般的に中小企業が該当し、カテゴリー1・2と比較して詳細な書類提出が求められ、審査に時間を要する場合があるのが特徴です。
入管における企業カテゴリー4とは、設立間もない新設会社や、上場企業(カテゴリー1)などの大規模企業・中堅中小企業(カテゴリー2, 3)のいずれにも当てはならない、小規模な会社や個人事業主を指します。事業の実態や安定性・継続性が見えにくいため、入管への提出書類が増え、審査に時間がかかり、付与される在留期間も原則1年となるなど、審査のハードルが最も高い区分です。
※カテゴリー別の企業について
在留資格を持つ外国人は、入管法に基づき定められた届出義務を履行する必要があります。具体的には、転職によって勤務先が変わった場合や、会社の倒産・解雇などで所属機関を離れた場合に、14日以内に「契約機関に関する届出」や「活動機関に関する届出」を出入国在留管理庁へ提出しなければなりません。
また、氏名や国籍などに変更があった場合も同様です。これらの届出を怠ると、法律上の義務を果たしていないと判断され、在留期間の更新時に不利な評価を受けます。たとえ他の条件を満たしていても、届出義務違反が原因で在留期間が短縮されることがあります。
日本に在住する外国人には、日本人と同様に納税や社会保険料の納付といった公的義務が課せられます。住民税や所得税の納税、国民健康保険や国民年金への加入および保険料の支払いを、期限通りに行っていることは、在留期間の審査において極めて重要な要素です。
これらの支払いに遅れや未納があると、日本の法令を遵守する意識が低いとみなされ、在留状況が良好でないと判断されます。特に、在留期間5年や永住許可の申請においては、過去の納付状況が厳しくチェックされるため、公的義務を誠実に果たしている実績を示すことが不可欠です。
在留期間の審査では、申請者が日本の法律や社会規範を守って生活しているか、つまり「素行が良好であるか」が問われます。これには、犯罪歴がないことはもちろん、交通違反の有無や回数も含まれます。重大な犯罪を犯した場合はもちろんのこと、軽微な交通違反であっても、繰り返し行っていると素行が良好でないと判断される可能性があります。
法律違反は、在留資格の更新が不許可になる重大な理由にもなり得ます。日頃から日本のルールを遵守する高い意識を持ち、クリーンな在留実績を維持することが、長期の在留期間を得るための基本的な前提となります。
法律で定められた条件を満たすことは大前提ですが、さらに在留期間5年を取得する可能性を高めるためには、申請内容を工夫することも重要です。入管の審査官に対して、自身が日本で長期的に安定して活動できる人材であることを、提出書類を通じていかに説得力を持って伝えられるかが鍵となります。
ここでは、審査で有利に働く2つのポイントを解説します。
雇用の安定性は、在留期間を決定する上で非常に重要な要素です。申請時には雇用契約書を提出しますが、契約形態が「無期雇用」であることが最も望ましい形です。有期雇用の場合は、これまでの契約更新の実績や、今後も契約が更新される見込みがあることを勤務先に証明してもらうなど、長期的な雇用の見通しを客観的に示すことが有効です。
勤務先の事業の継続性や安定性を証明する資料(決算書など)も、間接的に自身の雇用の安定性を裏付ける材料となります。入管は申請者が日本で継続して安定収入を得られるかを重視するため、この点を明確にアピールすることが求められます。
就労ビザでは、在留資格で許可された活動範囲内の業務に従事することが求められます。特に「技術・人文知識・国際業務」ビザの場合、大学での専攻分野やこれまでの職務経歴と、現在日本で行っている業務内容との間に関連性があることが重要です。この関連性が低いと判断されると、在留資格の活動内容に適合していないと見なされ、更新自体が難しくなることもあります。
申請の際には、職務内容説明書などで、自身の専門知識やスキルが現在の仕事にどのように活かされているのかを具体的に説明することが効果的です。専門性と業務内容の一貫性を示すことで、長期在留の必要性を補強できます。
これまで解説した5年を取得するための条件を満たしていると思われるケースでも、些細な見落としや過去の経緯が原因で、在留期間が1年の短い期間に決定されることがあります。更新申請を行う前に、自身の状況が審査で不利に働く可能性がないかを事前に確認しておくことが重要です。
ここでは、在留期間が短くなる代表的な事例をいくつか紹介します。
住民税や国民健康保険料などの公的義務を滞納している場合、在留期間の更新審査で極めて不利になります。たとえ申請直前にまとめて支払ったとしても、過去に納付期限の遅れが何度もあった事実は記録として残ります。これは、公的義務を軽視していると判断される大きな要因となり、在留状況が良好でないと見なされます。
その結果、本来なら3年や5年の在留期間が許可されるような場合でも、短い期間に短縮される可能性が高まります。日頃から期限内にきちんと支払いを行うことが、安定した在留資格を維持する上で不可欠です。
転職をして勤務先が変わったにもかかわらず、入管法で定められた「所属機関に関する届出」を14日以内に行っていない場合、届出義務違反となります。この事実は在留期間の更新申請時に必ず発覚し、審査官にマイナスの印象を与えます。
法律で定められた手続きを怠ったとして、在留状況に問題があると判断され、ペナルティとして在留期間が短くされることがあります。転職後は新しい環境に慣れることで忙しくなりがちですが、法律上の義務である届出は忘れずに速やかに行う必要があります。
日本の法律を遵守していることは、在留を許可する上での大前提です。過去に犯罪で有罪判決を受けたことがある場合はもちろん、比較的軽微とされる交通違反でも、その回数が多いと素行不良と判断される一因になります。特に、何度もスピード違反を繰り返したり、駐車違反を頻繁に行ったりしていると、日本の交通ルールを守る意識が低いと見なされます。
これらの違反歴は審査の際にすべて確認されるため、たとえ悪意がなくても、結果として在留期間が短縮されるリスクを伴います。日頃から法令を遵守する姿勢が重要です。
初めて就労ビザを取得して日本で働き始める場合、在留期間は「1年」とされることが一般的です。これは、申請者や勤務先に何か問題があるわけではなく、入管が「まず1年間は日本での在留状況をみたい」という趣旨で運用しているためです。この最初の1年間を、法律を守り、納税などの義務をきちんと果たしながら真面目に勤務すれば、その良好な実績が評価されます。
そして、次回の在留資格更新時には、3年や5年といったより長期間の在留が許可される可能性が格段に高まります。したがって、初回の期間が短くても過度に心配する必要はありません。
在留期間5年を取得するためには、勤務先が上場企業などの安定したカテゴリーに属していることに加え、申請者自身が届出や納税といった公的義務を誠実に履行し、日本の法令を遵守していることが絶対条件となります。さらに、申請においては長期雇用の安定性や、自身の専門性と業務内容との関連性を明確に示すことがポイントです。
一方で、税金の滞納や届出の懈怠、交通違反といった事項は、在留期間が短縮されるリスク要因となります。希望する在留期間を得るためには、これらの条件や注意点を十分に理解し、日頃から自身の在留管理を適切に行うことが求められます。